『セミオーシス』スー バーク (著) を読んだ。
知性を持つ植物が存在する地球型惑星パックスで紡がれる7世代にわたる年代記。
帯では、「敵か味方か!」と書いているが、内容は二項対立では簡単に呑み込めない話。
重力強めのパックスに移住してきた人類は、争いの絶えなかった地球からの移住者。新天地をパックスと名付け、新たな生活を営んでいく。
当然、新しい環境に順応し、環境と戦い、生き抜く必要があるのだが、地球から持ち込んだハイテク機器は壊れていき、仲間は次々とこの世を去っていく中、パックス生まれの第二世代は、精巧なガラス細工でできた、町、レインボーシティを発見する。
人口衛星でその存在を知っていたにも拘わらず、その存在をひた隠しにし、ただ朽ちていくことを選んだ第一世代を捨て置き、レインボーシティでの生活を選ぶ子供たち。
その街で、高度な知性を持つ竹に彼らは接触するー。
といった流れ。
人間に対する植物、蟲等の土台が全く異なる知的生命体の会合はいつも面白い。
人間は足があって危機が迫れば移動することもできるが、植物はその通りではなく、その土地で生きていく必要がある。(根を張り、自分を複製するということはできるが、)当然そうなれば、自分が成長し、繁栄しやすいように環境に影響を及ぼしたり、良い環境にするために使役動物にとって良い環境を作ったりする。
現実でも、動物と共生している植物は多い。ミツバチなんかもそうだよね。彼らにとっては花の蜜は栄養だけど、植物は彼らがいなければ効果的に受粉できないし、遠くにいる相手に遺伝子を届けることができない。
利用しあう関係性は地球でもよくみられることだけど、それが、二項対立を理解し、言語を理解するようになってくるのが、本編。最終的にはユーモアも理解する笑
けどここまで行ってしまうと、動けない人っぽくなってしまって、植物特有の、面白さってのはだんだん失われていっちゃうのが残念。なんだろう、限界があるからこその面白さであったり、なり切れない葛藤なんかは機械と人間みたいな対立軸で面白いんだけども…
今作の中で登場する「ガラスメーカー」と呼ばれる現生知的生命体(虫っぽい)のコミュニケーション方法は結構面白い。においで高度なコミュニケーションをとる。化学組成なんかを組み替えて、においを発し、女王、兵隊、労働者が規律立てて動く。
人間って視覚による認知の割合が非常に大きいことを考えると、嗅覚を使ってなにかできるかと思うとまああんまりできない。
それでもにおいによる情報伝達って初めて聞くし、視覚、聴覚による伝達ではない、新しい目線をもらえた気がする。
発想の転換じゃないけど、こういうのがSFの醍醐味だよねえと思う作品。