ただ言いたいだけ日記

読んだ本や、映画の感想を気の向くまま

虐殺器官読んだ

伊藤計劃虐殺器官を読みました。

全体として読みやすく、所々メタルギアを彷彿とさせる表現や、技術が登場し、ワクワクする内容だった。

人工筋肉なんか月光っぽいし、環境追随迷彩もオクトカム

だよなあと思った。

てかノベライズやったのこの人だったのね。

 

進化において虐殺を促す文法が形質として獲得されたというのはなかなか面白い。

 

例えば、飢餓や干ばつに苦しんだ人類は甘いものを好み、それを体に蓄えることで進化をしてきた。

甘い物を好まない集団や、死亡をため込めない集団は淘汰される。

 

それと同様に人類は利他の心を持ち、共に助け合うことで集団を形成し、抜け駆けや騙しをする固体ははじめは得をするが、最終的には淘汰されていった。

しかし、その集団が集団を維持できないほどの飢餓に襲われた場合はどうするだろうか。

古今そのような状況では戦争や、技術革新によって問題解決をしてきたが、その一解決法として虐殺の文法を形質的に獲得してきた、というのが、本編の主題だ。

 

進化はその個体そのものを生き延びさせるように獲得される。しかし、種そのものを存続させるために獲得される形質があったらどうだろう。

 

本編の虐殺の文法はそれだ。

種が危機的状況に陥った際に、虐殺の文法がコップに注いだ水があふれだすように効力を発揮し、その集団内で虐殺を起こし、一定数まで個体数を削減する。

そうすると飢饉が起きていても、全員を救うことは無理でも、一部個体は残り、集団は持続することになる。

 

人類のために、集団のために人の死を厭わないってのは、よくあるトピックだね。

切嗣的な葛藤を見るのは好き。

オルカ旅団もいいよね。

 

ここでひとつ面白いなーと思ったのは、国外で常にアフリカや中東なんかの火種を内線状態にし続けて、テロなんか考える余裕も無くすっていうテロ対策。

 

人道的にはどうかと読んでて思ったけども、現実に同じような状況になっていることを考えると、現実は小説よりも奇なりですなあ。